私は、2014年に好酸球性副鼻腔炎を患いました。
匂いを感じなくなり、味覚もおかしくなったため食べることが難しかったと言います。発症当時は車の整備工を目指して勉強をしていましたが、臭覚がないとガソリン漏れに気が付けないなど危険が伴うので考え直すよう先生に涙ながらに言われました。
思いもしない形で夢が崩れ、少しの間途方に暮れました。病気は難治性。しかし幸いにして命に関わるものではないので上手く付き合いながら生きて行こう。次の夢を探すために世界中の同じ症状の方々にメールしました。
ある日、南米の方からコーヒーの焙煎をしているというメールを貰いました。意外な返事に驚き、最初は半信半疑でした。南米で焙煎士をしている彼は「こちらでは匂いを感じない人でも焙煎士がいますよ。目で色を見て耳で音を聞いて焙煎をするんです。」と言われたそうです。そこからは一直線。
母・綾戸智恵が普段通っていた珈琲店が自家焙煎だったこともあり、お店に足繁く通い珈琲のこと豆のこと焙煎のこと焙煎士という仕事について教わりました。今は自分でコントロールできるサイズの焙煎機を導入しゆっくり丁寧に焙煎をしています。
出来上がりを味見することは病状に慣れた今でも完全ではないのでカフェやレストランの知り合いはもちろん、身近な様々な方にも飲んでいただいて感想を頂いています。それを焙煎した日の天候、気温や湿度焙煎などとともにメモし1日ごとにより良い焙煎できるよう努めています。
母の音楽のように、いいえそれ以上の多くの人に自分の焙煎した珈琲を飲んで良い心持ちになって欲しい。それが思いであり夢です。
人生ってほんま、おもろいというか、何が起こるかわからんもんですね。なんと長男イサがコーヒーロースターになりよりました。まぁジャズに合うコーヒー、てなことで私もはりきって応援してます。
皆さんから美味しいと聞きムチャクチャ嬉しいです。小さい頃から物作りが好きな子で私と真逆の職人肌。ホンマに、おーじょしまっせ!コーヒー飲んでくれはるみなさんがこれからのイサを育ててくれはるんやと。これからのアフロ珈琲が楽しみです。
ジャズシンガー 綾戸智恵